2017.10.02
このカテゴリーに入れるのはちょっとおかしいかもしれませんが、ご容赦ください。
「黒い巨塔」(講談社)、「絶望の裁判所」(講談社現代新書)という本を読みました。著者は、瀬木比呂志氏で最高裁判所調査官などを歴任した元エリート裁判官です(現在は大学院教授)。
「黒い巨塔」は小説で、そのタイトルは山崎豊子の「白い巨塔」を意識したものであると思われますが、それが単に、医師が白衣を着ているのに対し、裁判官が黒い法服を着ていることに由来するものとは思えません。裁判所組織を、上命下服、上意下達のヒエラルヒーと断ずる著者からすれば、裁判所の体質を端的に「黒」というイメージで現したものと思われます。
「黒い巨塔」の冒頭には、通常の小説のごとく、「この作品は純然たるフィクションであり云々」という定型文句が書かれているのですが、あとがきにも「この作品は完全な創作であり、実物録、実録小説では全くない」旨の記載がなされています。
フィクション性を2度も強調しているところに、かえって逆説的意味が感じられるのではないでしょうか。