2018.10.26
「損する結婚 儲かる離婚」(藤沢数希著、新潮新書)という本を読みました。著者は、弁護士かと思いきや、「理論物理学研究者、外資系金融機関を経て、作家」とありました。
なぜ結婚すると損をするのか、なぜ離婚をすると儲かるのか、タイトルからちょっと気になり読んでみると、著者は、結婚を「所得連動型の債券」という金融商品の一つと位置付けているのです。理系の発想ですね。
著者が法律実務の専門家ではないことから、若干正確でないところも見受けられましたが、高額所得者の夫が婚費地獄(「婚費」は「こんぴ」と読み、夫が妻に渡す生活費のこと。)に陥るところなど、リアルな部分も結構ありました。
芸能人のゴシップに対するコメントなどもあり、一般の方にも気軽に読めますので、興味のある方はご一読を。
2017.10.02
このカテゴリーに入れるのはちょっとおかしいかもしれませんが、ご容赦ください。
「黒い巨塔」(講談社)、「絶望の裁判所」(講談社現代新書)という本を読みました。著者は、瀬木比呂志氏で最高裁判所調査官などを歴任した元エリート裁判官です(現在は大学院教授)。
「黒い巨塔」は小説で、そのタイトルは山崎豊子の「白い巨塔」を意識したものであると思われますが、それが単に、医師が白衣を着ているのに対し、裁判官が黒い法服を着ていることに由来するものとは思えません。裁判所組織を、上命下服、上意下達のヒエラルヒーと断ずる著者からすれば、裁判所の体質を端的に「黒」というイメージで現したものと思われます。
「黒い巨塔」の冒頭には、通常の小説のごとく、「この作品は純然たるフィクションであり云々」という定型文句が書かれているのですが、あとがきにも「この作品は完全な創作であり、実物録、実録小説では全くない」旨の記載がなされています。
フィクション性を2度も強調しているところに、かえって逆説的意味が感じられるのではないでしょうか。
2017.08.04
「プロ弁護士の仕事術・論理術」(矢部正秋著、PHP文庫)という本を読みました。
著者は、はしがきにおいて、新人弁護士について、「一流大学を出て、司法試験に合格し、一年の司法修習を経ているのに、考える基礎ができていない。」と嘆き、これまでに若い弁護士に仕事の基本的な考え方を伝えてきたものの要約が本書であると述べています。
その構成は、第1章「事実をつかむ力」をつける、第2章「自分で考える習慣」をつける、第3章「文章で訴える力」をつける、第4章「客観的に見直す習慣」をつける、第5章「他者を深く読む力」をつける、第6章「賢い人生習慣」をつける、となっていました。弁護士の仕事は、事実関係の把握、論理構成、文章力が基本ですから、その内容はウンウンと頷けるものでした。
私の心に響いたのは最終章の賢い人生習慣の部分で、その最後の項が「多忙と最終的に決別する」で終わっていたのは非常に印象的でした。
弁護士的思考に興味のある方にお勧めできる一冊です。
2014.11.04
「実践 訴訟戦術」という本を読みました。サブタイトルには「弁護士はみんな悩んでいる」とあり、帯の部分には「勝つためのノウハウ・負けないための留意点・和解のための段取り等を詳解」と書かれてありました。
若手、中堅、ベテランの3人の弁護士が新人弁護士の質問に答えるという形で、4人の弁護士の問答形式で書かれてあるので、大変読みやすく、若手やベテランの考え方の違いがわかるのも興味深いところです。
弁護士の訴訟戦術というと、どんな権謀術数や高等テクニックを駆使するのかと思われるかもしれませんが、私は基本に忠実にオーソドックスに進めるのが1番と考えており、この本でも世間の人があっと驚くような戦術的なものは見受けられなかったように思います。
新人弁護士には業務上大変参考になる本だと思われますし、弁護士の発想や行動パターンに興味のある一般の方も面白く読めるのではないでしょうか。
民事法研究会発行、東京弁護士会春秋会編、262頁、定価2300円(税別)。
2014.02.28
「労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応」(野口大著、日本法令発行)という本を読みました。
著者は平成5年に弁護士登録した弁護士で、はしがきによると、今後人事・労務トラブルは激増するとしたうえで、企業経営者は人事・労務を企業活動のリスクのひとつとして意識し、トラブルが発生しないような入念な対策を講ずる必要があると説いています。そして、人事・労務の紛争のうち、いわゆるグレーゾーンとして解釈や判断が必ずしも容易ではない「休職社員の復職」「問題社員(能力不足・反抗的等)への対応」「偽装請負」「労働条件の不利益変更」等の12の問題を取り上げ、判例や通達を整理するとともに、経営側・企業側の立場から具体的な対応方法を示しています。
単に判例や学説を解説するにとどまらず、弁護士の企業秘密ともいえる具体的な対処方法まで明らかにしている点で、類書にはないものになっていると思います。
労務管理の担当者には、非常に実践的な本といえますが、労働者側にとっても、敵の手の内を知るという意味で、大変参考になるのではないでしょうか。
2014.01.12
あけましておめでとうございます。平成26年もよろしくお願いいたします。
さて、「遺言相続の落とし穴」(大阪弁護士協同組合)という本を読みました。55人の弁護士の共著になっていました。
サブタイトルには、「その遺言書で、本当に紛争を予防できますか?」とあり、帯の部分には、「生兵法は大怪我のもと。相続紛争はこうして起きる!相続税対策は相続対策にあらず。」と書かれてありました。
実際に相続紛争の解決に携わっている弁護士が書いているだけあって、一般には間違いないと思われている公証人、税理士、信託銀行などに勧められるままに作った遺言書では、必ずしも相続紛争を回避できないケースなどついて、本当に実務的な観点からのアドバイスが書かれてありました。
相続全般にわたる60のテーマの解説もなされているので、これを読めば相続問題に関する一応の理解をすることもできます。
定価は税込1,300円。たった千円余りでこの内容ということになりますと、遺言の作成を検討している方には、是非読んでほしい一冊だと思います。
2013.11.01
「事例に学ぶ 離婚事件入門」(民事法研究会発行)という本を読みました。10人の弁護士の共著となっていました。
この本は、離婚原因や慰謝料、財産分与、親権、面会交流、DV、婚約解消等が争点となった12のケースを設定し、依頼者が弁護士に相談する場面から、弁護士委任、交渉、調停、裁判と進む過程について、依頼者と弁護士との具体的やり取りを掲げながら解説を加えたものです。申立書などの書式も豊富で、経験の少ない若手弁護士にはもってこいの本といえますが、依頼者と弁護士との会話が中心に進むので、一般の方にも小説のように面白く読めると思います。
一般の方に興味があると思われる離婚慰謝料や財産分与の相場も書かれており、また弁護士の具体的な仕事の内容を垣間見ることもできます。
定価は2,800円(税別)となっていました。普通の本屋さんには置いてないかもしれませんが、ネットで検索すればヒットするはずです。現実に離婚を考えている方にお勧めできる一冊です。
2013.07.16
午前中は、岡山地方裁判所への出張でした。往復の電車内で「弁護士に学ぶ 交渉のゴールデンルール」(奥山倫行著、民事法研究会発行)という本を読みました。
著者の奥山氏は、平成14年に弁護士登録をした札幌の弁護士さんのようです。はしがきには、「交渉には生まれもった才能は重要ではない。交渉には、誰でも簡単に習得して、すぐに応用できるノウハウがある」とありました。
本書では、アポの取り方や座席の座り方から、相手の真意を探る交渉の駆け引きまで、44項目にわたるノウハウが紹介されていました。中には、ここまで公開していいのか、と思うくらいの弁護士の企業秘密に属するものも見受けられました。
対象は一般向けで、定価は1,400円です。44項目のうち、1つでも2つでも「これは」というノウハウが見つかれば、かなりお買い得ではないでしょうか。
仕事で交渉に携わる方や弁護士のノウハウに興味のある方にお勧めできる1冊です。